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本書をすいせんします
「木のしあわせ」に託した熱き思い−財団法人 日本自然保護協会 吉田正人
自然はみなさんの身近に必ずある。一番身近にあって、ふれあいのできる自然、それが「木」です。
著者の中山さんは、一番身近にある自然である「木」の四季を通じて、植物や動物や子どもたちをふくむ私たち人間の「しあわせ」をこの絵本の中に表現している。
「しあわせ」とはなんだろう。豊かにくらすこと、有名になること……この世の中にはさまざまな「しあわせ」があるが、中山さんは「木のしあわせ」は、決して木だけのしあわせではないことを、この絵本を通してうったえている。
木は、蝶に蜜を与え、蜂に花粉を与え、毛虫に葉を与え、キツツキにねぐらを与え、そして子どもたちに日陰を与える……。つまり「木のしあわせ」は、無私に与え続けることによってこそ成就されることを教えてくれている。毛虫に葉を食われることは、一時的には木のしあわせでないかもしれない。しかし毛虫がヒヨドリの餌となり、蛾となってアオバズクの餌となったとき、木をとりまくすべての生き物のしあわせが成就されるのだ。
秋になり、木は葉を落とす。そんな季節でさえ、木はテントウムシにあたたかな布団を与え、子どもたちに落ち葉たきの楽しみを与えてくれる。そんな木にムササビが「もうすぐ春だよ。寒いけどがんばろうね」と呼びかける。しかし木は決してさみしい思いをしてはいない。花が咲き、若葉が萌え、青葉が茂り、ムササビや子どもたちが元気に活躍するしあわせを夢見ているのだ。
私は、中山さんが勤める「こどもの国」で、こんなしあわせの木をたくさん見てきた。こどもの国で開いた、自然観察指導員講習会の中では、木からたくさんの元気をもらった。でもこの世の中のすべての木が、こんなしあわせを感じているかといえば、必ずしもそうではないかもしれないとも思う。
道路や住宅を造るために伐られてしまい、もうほかの生き物にしあわせを与えられなくなってしまう木。道路の緑地帯に植えられたものの、ほかの生き物たちがちっとも訪れてくれない木。そんな木も世の中には多い。この絵本を読んだ人が、木のしあわせに気づき、今度は木をしあわせにすることで、自分のしあわせを感じられるようになることを願ってやまない。
「しあわせ」は人間だけのものではない
−財団法人 児童健全育成推進財団(旧社団法人 全国児童館連合会)渡部 博昭
太古の昔から、私たち人類は自然に抱かれて生きてきました。衣・食・住の貴重な糧を恵んでくれ、あるときはご神木として崇められ、またあるときは子どもの遊び場ともなりました。そもそも私たちも自然の産物です。ですから、人々は自然を求め、自然の中に身をおくと、一体感にも似た「しあわせ」な気持ちになれるのではないでしょうか。
でも、この「しあわせ」は人間だけのものではありません。
私たちと同じように虫や鳥、動物たちもみんな一緒に生かされてこそ、私たちの「しあわせ」があることを、この本はやさしく語りかけてくれます。生命の営みの素晴らしさを歌い上げてくれます。
物はおろか、人間の命まで粗略にする人たちがいる昨今、大人と子どもが同じ木陰に寄り添って、一冊の本を広げ「しあわせ」な気持ちにたゆとうてみませんか。
木のメッセージを聴く−社団法人 日本ネイチャーゲーム協会 三好 直子
木の声が聞こえたら、どんなに楽しいでしょう。
木の暮らしに思いを馳せることができたら、どんなにおおらかになれるでしょう。
木から学ぶことができたら、どんなにやさしくなれるでしょう。
美しい切り絵で、一本の桜の木と生き物とのやりとりを描く「木のしあわせ」のページをめくっていると、木の大きな寛容さにつつまれます。そして、日々出会う木の声が聞こえてくるような気がしてきます。木の前で立ちどまって、見上げてみたくなります。
さりげなく佇む木々の存在に気づき、そのメッセージに耳を傾ける心を育む絵本です。
子どもの心に、凛とした灯がともる−佐々木 洋(プロ・ナチュラリスト/佐々木洋事務所)
私の大切な友人の中山康夫さんが、素晴らしい本を出版された。人間を含む自然界に、暖かいまなざしを向け続ける氏のお人柄がにじみ出た、珠玉の作品である。
私たち人間が本当の意味で自然界の一員であり続けるには、いろいろな自然物の立場に立って考えてみるやさしい心と、季節や年月の移ろいを、しっかりと感じる澄んだ感性とを持ち続けなくてはならないと思う。
この物語では、サクラの古木であろう主人公の一本の大木の、地球全体、いや宇宙全体の仲間たちに対するやさしさが、美しいシンフォニーを奏でるような季節描写のなかに見事に綴られてゆく。
読む大人、読みきかせてもらう子どもたちの心に、小さいけれど、凛とした灯がともるに違いない。
それはやがて、とてつもない大きな炎となり、世を照らしてゆくのだ。言葉や絵のひとつひとつに、作者の穏やかな笑顔が重なってみえるのは、私だけであろうか。
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