『老いの旅路』 老いを生きる人びとの人間模様を描く短編集

熊谷 茂 著

ISBN978-4-89491-147-5 
C0093  ¥1500E
定価1575円(本体1500円+税5%)


年を取ってその身になってみなければわからないというが、自分が着実に年を重ねていくとその言葉がしみじみと理解できる。老いの理解と人間理解が共通項になっている。


〔著者紹介〕
昭和29年 岩手県一関市生まれ。東北福祉大学卒業。
現在 特別養護老人ホーム明生園、明生園デイサービスセンター・グループホームつくしの里など八事業所でなす高齢者総合福祉施設「明生園」の総合施設長(園長)。
著書 詩集『しずかな眺め』(一関詩の会)、小説『人生の岬』(同時代社)、同『老いの風景』『老い模様』『老いの窓辺』(いずれも萌文社)、共著『老いがよければすべてよし』(大月書店)、同『生活文化を支える介護』(一橋出版)など多数。


〔もくじ より〕 

1章  老いの谷間で(エッセイ) 
 老いの谷間で/ 老いも若きも/ 思い思われ/ 老いは万華鏡/  
 独り暮らしへ不安/ 子供たちへの遠慮/ 慣れた土地に愛着/  
 人間何かができる/ 心の強さと優しさ/ 励まし合って生活/  
 人形をいとおしむ/ 「過去」への理解を/ 生きているあかし/ 
「おいしさ」を実感/ 離れてさらに熱く/ 不安な心の裏返し/ 
 心の中に死の足音/ 死ぬ前にもう一度/ 看取るたびに痛感/ 
 頼れる者ない苦悩/ 第三の人生飾る時/ ボケなんて/ 
 少子高齢化/ 介護離婚/ 福祉と教育/ 「敬老」は死語?/
 高齢者の孤独死/ 高齢者と若者/ 老親への感謝/ 特養ホーム 

2章  老いのあとさき(詩)
 昇天/ 老残/ 老鶏/ 失なう/ 焼かれる/ 明暗/ 
 幸せに生きて/ 先生の空/ 垂れた日の丸/ 八月の教室 

3章  老人ホーム物語――新人介護員 山崎真知子の場合      
 老人ホームの生徒/ 価値観を理解すること/ はじめての死との対面/ 夜勤を終えて/ 弱い人の味方/ 限られた命/ 管理と自由/ 
 介護員会議の結論/ 帰りたい/ 歌に心洗われて/ 仲間という家族/ 老人ホームの夕焼け 


〔あとがきより〕

『老いの旅路』は、新聞紙上や月刊雑誌で連載したエッセイや小説、そして老いに関わる詩の三つの分野から構成する本とした。
 私は三十年余り老人福祉施設(特別養護老人ホーム、デイサービスセンター、グループホームなど)で仕事をしている関係から、たくさんのお年寄りや家族、地域住民、各関係者と関わり、老いの生きざまと人間の生きようを学ばせてもらった。そしてそれぞれの人間模様を文章にした老いシリーズ『人生の岬』(同時代社)、『老いの風景』『老い模様』『老いの窓辺』(萌文社)と刊行し、今回あらためて五冊目をまとめることができた。
 エッセイは百人百様のお年寄りの生き方とそのお年寄りを取り巻く人間関係を、いろいろな視点から切り取って書いてみた。年を取ってその身になってみなければわからないというが、自分が着実に年を重ねていくとその言葉がしみじみと理解できる。老いの理解と人間理解が共通項になっている。
 詩は詩人、山本太郎氏が老いをモチーフにした私の詩を毎回新聞紙上で取り上げ解説までしてくださったもの。今回本の発刊を機に散逸しかかっていた詩をまとめることができたが、私の詩は叙事的、散文的なスタイルであることをあらためて意識する。
 「老人ホーム物語」は、福祉専門学校を卒業したばかりの新人介護員がさまざまな壁や困難にぶち当たり、先輩たちに叱咤激励されながら成長していく過程を描いている。現場で学習したことが一年の間で少しずつ人間としての幅を広げていく。施設の中には人間を成長させる力が溢れている。まさに人間学校である。
 発表した作品の多くは古いものであるが、老いと介護に関わるものは今もほとんど変わっていない。たくさんの読者の声を受けて刊行に踏みきったが、これらの作品から今一度、老いを理解してもらえたらうれしい。なお、本書は複数の紙誌に発表した作品に加筆したので一部重複する箇所もあるが、全体の流れを大事にしたいと思いそのままとした。
 今回も出版にあたって真摯に対応してくださった萌文社社長の谷安正氏に厚く御礼申し上げます。

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