シリーズ・ホームヘルプ 4
ホームヘルプと医行為

篠崎良勝・塩野谷高司 著

     はじめに    もくじ

〔はじめに〕

 介護従事者は労働者です。しかし、介護従事者に関する専門書の多くは、福祉専門職としての立場から述べられていることが多く、労働の実態や環境の改善に向けた検討はほとんどなされていないのが実情です。また労働者という視点で扱うことが少なかったため、労働者としての地位の確立や向上は看過され続けてきました。
 本書では、介護労働者の懸案の一つである医療行為をとり上げていますが、この問題は降って沸いた問題ではなく、介護保険制度施行前から存在しており、無資格者である介護従事者が医療行為を行なっている問題を、わが国では何もせずに見過ごしてきたのです。
 個人的な憶測の域ではありますが、わが国は、福祉に関わる人に対して強い固定観念を抱いてはいないでしょうか。具体的には、「介護労働者はボランティア精神のある人物だ。奉仕的自己犠牲を受け入れることができる人物だ」というイメージを勝手に植え付けているのではないでしょうか。したがって、介護労働者が職務範囲でない医療行為をやらされていても、「それは、ボランティア精神のある人なら受け入れるべきもの」ということで、この問題を封印させてきたのではないでしょうか。その結果、介護労働者の医療行為の問題を、専門性に関する議論にのみ集中させ、介護労働者を労働者の立場としてみることに対しては、マスキング(目隠し)をしてきたのです。
 しかし、くり返しになりますが、介護従事者は労働者です。労働基準法(第9条)に照らしても、労働者としての介護労働者をみることは、いたってノーマルなことなのです。介護従事者を労働者としてノーマルな状態に戻すためにも医療行為の問題をここでもう一度整理していくことが、わが国の福祉施策の充実には不可欠と考え、本書を作成いたしました。本書が介護現場でかかわるすべての方に少しでも役に立つことができれば幸いです。(篠ア良勝)

〔もくじ〕
シリーズ・ホームヘルプ 4
ホームヘルプと医行為
篠崎良勝・塩野谷高司 著

第1章 医行為と介護をめぐる様々な歴史的背景―厚生労働省の通知から―
1.医行為と介護をめぐる画期的通知 
2.医行為の法医学的研究 
 (1)報告書1の解説 
 (2)厚生労働省への照会事例 
 (3)ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の方へのたんの吸引がホームヘルパーに解禁された背景 
 (4)施設で働く介護従事者の場合 
  ■通 知1 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について 
  ■報告書1 「医療行為及び医療関係職種に関する法医学的研究」報告書 
  ■報告書2 「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会」報告書 
  ■通 知2 ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の在宅療養の支援について 
  ■通 知3 在宅におけるALS以外の療養患者・障害者に対するたんの吸引の取扱いについて 

第2章 医行為に対する介護従事者からの現実的対応・齟齬(そご) 
1.生活という場面における「医行為」ってどんなもの? ―利用者の変化を介護専門職としての視点で見つめましょう― 
2.「医行為」と「介護行為」の境界線ってどこにあるの? 

第3章 介護従事者への医行為の研修とその課題 
1.介護従事者が医療事故の経験者? 
2.介護従事者が起こした医療事故の具体的な内容 
3.介護従事者が起こした医療事故の主な内容 
4.新たな行為を職務とする際の研修の必要性 

第4章 介護従事者に対する研修プログラムの提案と実践 
1.介護従事者に対する研修プログラムの提案 
2.介護従事者に対する研修プログラムの実践 
 (1)研修目的 
 (2)受講者 
 (3)講義内容・講義者 
3.介護従事者に対する研修プログラムの効果 
 (1)アンケート調査の実施 
 (2)アンケート調査の結果

第5章 「まとめ」
 (1)通知1、通知2、通知3はホームヘルパーに対するハラスメント 
  ■要望書 重度障害・重症神経難病ALS患者等の療養環境整備に関する要望 
 (2)NIMBY(ニンビー)的発想 

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