子どもの参画について深く掘り下げ、指針を与えてきた世界的な名著。待望の日本語版がついに完成!

子どもの参画
コミュニティづくりと身近な環境ケアへの参画のための理論と実際

ロジャー・ハート[著] 木下 勇・田中 治彦・南 博文[監修]IPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)日本支部[訳]
■A4変型(縦240o×横210o)/並製240頁ISBN4-89491-12-8 C0037 2000年10月刊■定価:本体3200円+税/〒380円
 子どもは、社会の構成員として、市民として、大人のパートナーとして地域づくりに主体的に参画する能力があり大人にはない力を発揮する。

 著者ロジャー・ハート氏は、すでに日本でも「参画のはしご」で紹介されているが、本書はユニセフのプロデュースによって、世界各地の豊富な事例を提示しながら子どもの参画の理論とその具体的な方法論を本格的にまとめあげたもので世界的名著としても注目されている。

 いまなぜ子どもの参画なのか。地球環境の持続可能な社会のありようと子どもの発達との関連をグローバルな視点にたって考察した本書は、今日のきびしい子どもの現状を打開し、21世紀の共生の社会を展望するのに欠かせない画期的な一冊である。

―目  次―

 日本語版によせて
 刊行にあたって
 まえがき

第T部 序論および概論

第1章 序  論 
環境はいまやあらゆるコミュニティの問題になってきた
子どもの権利と責任
子どもの環境に関する知識、関心、行動の発達

第2章 子どもの参画する能力の発達
アイデンティティの発達
社会性の発達
男の子だけでなく女の子の参画を助ける
個人差と特別のニーズを認める

第3章 組織の原則 
子どもを操ることや、形だけの子どもの参画を避けること
本物の参画のモデル
大人が着手し、大人と子どもが一緒に決定する参画の仕方
別の形の子どもの参画
民主主義的なやり方に関するいくつかの単純な原則
会合を主催する
競  争
マスコミ報道とかみ合わせる
プロジェクトを監視する

第4章 子どもの参画の新しい形態およびいろいろな団体との提携 
家庭での環境の管理
コミュニティ・スクール
コミュニティづくりの団体
子どもや青年の団体
ストリートチルドレン、働く子どもたち、その他の貧困家庭の子どものために活動する団体
子どもたちの「環境クラブ」
子どもが主体的に活動するクラブ、ネットワーク、プロジェクト
環境NGO
地域開発NGO
地方行政のもとにある子どもの議会
地方行政の環境関係部局
大人の環境専門家の後について活動する
学校とコミュニティのビジネス協力
コミュニティの環境センター
コミュニティの世話役、ファシリテーター、教師のための環境活動の支援センター
大人が担うべき新しい役割の開発:アニメーター、ファシリテーター、プロモーター

第U部 子どもの参画の実際

はじめに
第5章 子どもたちと行なうアクション・リサーチ
問題を特定する
研究テーマあるいは研究場所を調査する
データを分析し解釈する
環境活動を計画する
行  動
評価とアクション・リサーチのサイクルの繰り返し

第6章 子どもたちによる環境の計画、デザインと建設 
子どもたちによる自分たちの居場所の計画、デザイン、建設
校庭のデザインと建設
コミュニティを基盤とする計画に大人とともに参画する子どもたち
天然資源保存プロジェクトの計画への子どもたちの参画
大人の「クライアント」のための子どもによる計画とデザイン

第7章 環境の管理 
家庭での環境の管理:ブラジルのアマゾンにおける健康と幸せのための移動式サーカス
「子どもから子どもへ」プログラム
校庭の維持管理
子どもたちによるコミュニティの資源の管理

第8章 環境の監視 
開発および環境の質を表わす指標を決め、それを使うことに子どもたちを関わらせる
校庭の調査
フィリピンでのコミュニティに根ざした調査研究
環境保護の団体とともに行なう全国調査

第9章 子どもたちが一般大衆に問題を気づかせることと政治的活動をすること
キャンペーン
公のデモ
会  議
子どもによる公聴会
政治家や役人と会うこと
公の場での発表

第10章 地域から地球へ──提携とネットワークを通して 
活動交流または提携のプロジェクト
環境ネットワーク

第V部 方  法

はじめに
第11章 描画とコラージュ
個人で描く絵
ストーリーボード
みんなで描く絵
コラージュづくり
スライドに絵を描く

第12章 地図づくりと模型づくり
子どもの手づくりの地図
個人的な世界を地図化する
コミュニティの基本地図を作る
小規模の模型づくり
原寸大のシミュレーション

第13章 インタビューと調査
インタビュー
調  査
トレイル(観察路)、あるいは「得点をつけて歩く小道」

第14章 メディアとコミュニケーション 
印刷物と出版物(ニュースレター、雑誌、本など)
写  真
ビデオとテレビ
ラジオ番組制作
パフォーマンス
特別なイベント:フェスティバル、パレード、植樹祭など

第15章 結論:21世紀の持続可能な開発をめざしたコミュニティ 

 参考文献 
 索  引 
 訳者あとがき

 

 

 

 

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21世紀は子どもの参画の時代

 

●本書のすいせんとメッセージです●

 本書を読んでの感想をすいせんメッセージの形式で自由にお寄せください。永島 までメールを。以下のように随時掲載していきます。

おいしい<サンマ>の回復・再創造へ

 子どもは生き生きと<サンマ>と共に泳ぎながら育つ存在である。<サンマ>とは、日本の子どもたちが無くしてしまった遊ぶ空間と時間と仲間の3つの間(マ)のことである。

 本書は、子どもをめぐる<サンマ>を回復・再創造するための世界中の多彩な実践と、その意味づけの理論と、誰もがどこでも始められる手法のさまざまが満載されている。

 とりわけ、子どもの発達能力の理論と、アクション・リサーチの方法と、活きのよい旬の<サンマ>を食べる手法は秀逸である。

 「バイブル」のような本書に多くの人々が触れていただきたい。

                 千葉大学工学部都市環境システム学科教授

                               延藤 安弘


身近なところから楽しくユニークな実践を

 

 日本における子どもの権利条約の実効性についての不備が指摘されて久しい。条約遵守のために必要な国内法改革整備の遅れもさることながら、それとは正反対な形で文部、司法、厚生行政の法制メカニズムがはたらいている。

 権利条約に不可欠なオンブズパーソンや第三者機関設置どころの話ではなくなっている。その雲上に置かれてしまった法制レベルの攻防の間隙をぬって今すぐにでも私たちの身近なところで実現できそうなことは、子どもの社会参画プログラムをそれぞれの職域、生活の場で準備し、明日から子どもたちとともに楽しくユニークに実践することだ。

 その豊富な実例をロジャー・ハート著『子どもの参画』は示唆している。

                       児童館・学童保育21ネット

                               上平 泰博


もうひとつの世界地図として

       

 もうひとつの世界地図を見るような楽しい本です。ここには、世界各地のコミュニティで活躍する、元気な子どもたちの姿が描き出されています。

 最近、知人がザンビアでユースセンターづくりをすすめていることを知りました。彼女の活動も、この地図に書き加えたい気がします。読者の皆さんもまた、各地で活躍する子どもたちの姿を、この地図に書き加えたくなるのではないでしょうか。

 わたしが特に注目したのは、「操り参画」「欺き参画」についての指摘です。一瞬子ども時代に戻った自分が、ロジャー・ハートのことばに拍手喝采しているような気持ちになりました。大人が子どもと共に活動するには、このような視点が必要不可欠でしょう。

                             神奈川大学講師

                               久田 邦明


子どもの参画活動への着実で具体的な手だてを示唆

 

 コミュニティづくりに参画する世界の子どもたちが、これほど確かな力量を発揮していることを知ると、私たちは身近な子どもへの信頼感が浅かったのではないかと考えさせられる。そしてわが国でいじめや不登校などに悩んでいることが、まるでナンセンスのようにさえ思えてくるから不思議だ。

 いま今日的な課題として心の教育が声高に語られているが、しかし抽象的な論議よりもこのような子どもの参画活動の道をひらくことが着実で具体的な手だてとなることを示唆しているのではないかと思える。それにしても本書は、子ども時代を悲観的に見がちな風潮を打ち破り、大いなる期待を抱かせる一冊である。

                         子どもの文化研究所所長

                               寺内 定夫


ロジャー・ハートの「参画のはしご」との出会い

 

 現場の中で子どもたちの意見をどのように保障するか。一人の職員が受容する個人的資質からではなく、組織的に対応でき理論化できる実践が必要であると感じていた。そんなとき、児童青少年センターの建築計画において、中・高校生が直接行政の組織に参加して、建設への意見を述べ計画をプランニングする機会に恵まれた。

 ロジャー・ハート氏との出会いは、この児童青少年センター建設において、どのように中・高校生が委員会に参画していったか、IYFジャパン(国際青少年育成財団日本事務局)の主催する国際シンポジュウムで報告したことがきっかけであった。実践や理論のモデル化を好む私にとって「参画のはしご」は、目から鱗が落ちる思いであり先の実践を分析する場合の重要な視点となった。

 またハート氏からは、ほかの懇談会で児童館の多くが行政で担われていることから、その限界も指摘され狭い日本の範囲での活動に対して、民間で生き生きと活動している世界の動きに目を向けることも教えられた。

 今回の参画に関する理論と方法が日本語版となって刊行されたことは、青少年の社会参画の実践を日本で発展させるうえで、格好の手引き書になると思う。

 最後に、ロジャー・ハート氏は日本人の「学者」というイメージとは異なり、ハリソンフォード風の俳優のような雰囲気を漂わせている。そのせいか魅力的で、話も気さくで堅苦しさがない。まさに大勢の人が議論に参加しやすい「参画の下地」をつくられているようである。

                        杉並区児童青少年センター

                               鈴木 雄司


市民を育てる実践の書

 

 日本でも「子どもの参画」が現実の課題になり始めた。学校教育では総合的学習の時間の2002年本格実施を目前に控えて、あちこちの学校で「子どもとともにつくる授業」「地域の人たちとともにつくる授業」の模索が始まっている。

 また、市民によるまちづくりへの参画もこれまでになく活発に展開されてきているが、ぜひともそうしたなかに子どもの手になるプロジェクトを加えていきたいものである。

 日本では「地方自治は民主主義の学校」だと言われている。身近なところからさまざまな問題に対して、それぞれが意見を交流し議論し知恵を出し合って解決していく。その一つ一つの実践のるつぼの中で、民主主義を内在化する市民が育っていくのだ。ハート氏はそれを「制度的に確立された場で直接民主主義に参画する経験を重ねることによってしか達成できない」(196頁)と指摘している。

 子どもや市民を「市民として育む」実践の書として本書を強く推薦する所以である。

                    エコ・コミュニケーションセンター

                                森  良


湧き立つような思いとともに

 

 ロジャー・ハート著『子どもの参画』を、湧き立つような思いとともに、心から推せん致します。

 子どもの権利条約が生まれて以来、日本でも数多くのすぐれた著作、論考があらわれ、そのつど豊かな学びを経験し励まされてきました。しかし、それらの作品のなかには、大人による権利実現のプログラムが中心的な提唱であるものも少なくありませんでした。もちろん、私たち大人の責任がまず問われるのは当然です。けれども、その問われ方は「子どもの主体的人間性を認める点で、きわめて不充分であったこと」から出発しなければならないと思います。

 『子どもの参画』は、まさにその点で画期的であり、私はふとポーランドのコルチャックの実践を思い浮かべていました。

 この本が成功したのは、子どもの参画を一般的理論として論じているだけではなく、実践的問題意識を導きとして論述し、また現実に起きている実践例を豊かに示したことによっているものと思います。

 その問題意識とは、現代社会でもっとも普遍的であり、またアクティブな努力を求められている環境とコミュニティづくりです。つまりこの本は、「子どもの問題」ではなく、私たちすべてが直面する課題に子どもが挑んでいく、そのことを論じているのです。

 この本のなかに登場する世界各地の子どもたちは、自分たちの居住地域の「緑化計画」を手がけたり、コミュニティの資源管理をしたりします。地図を描き、模型をつくり、あるべき生活空間を構想します。

 そして私自身にとって、何よりうれしかったのは、地方自治体の政治・行政が、子どもたちの参画によって、ぐんぐん人間化し、民主化している各国の実例があげられていることでした。自治体関係者には、とくにおすすめしたいと思います。

 子どもたちが示す人類の未来に乾杯!

               自治体問題研究所・月刊『住民と自治』編集長

                               池上 洋通


子どもを信頼することの価値

 

 ロジャー・ハートが国際的な視野でとらえている子どもたちの環境活動と地域への参加の姿は、まったく斬新である。環境教育の領域で、NGOによって展開されている数多くのプログラムの分析を通じて、アクション・リサーチという学習の方法が子どもたちに実に多様な参画の能力を育んでいることをハートは明らかにしている。

 それは、コミュニティ活動のマニュアル化とは正反対の、具体的現実へのとりくみとおとなたちとの対話による試行錯誤に満ちた直接民主主義的な参加のプロセスであり、そのなかに学校のプログラムも、教師・専門家の支援も位置づけられている。ここでは、子どもたちの対話的な自己形成能力の可能性に満ちた発展過程が生き生きととらえられ、子どもを信頼することの価値が明確にされている。

 21世紀が、環境と子どもの参画の時代であることを啓示しており、専門的、社会的に子どもの問題に関わっているすべての人々に多くの示唆を与えてくれる本である。

                    東京大学大学院教育学研究科・教授

                               佐藤 一子


向けられた「まなざし」が穏やかだ

 

 行間からにじむ「まなざし」が優しい。その輝きは、畢竟子どもへ、第三世界へと照射していく。ロジャー・ハートのその謙虚な目線は、グローバルにしてしかもローカルな確かさで、地球・環境・まち・人間へと循環していく。

 この「グローカル」な切り口は、従来の日本の「まちづくり」理論のノーブルなスマートさを結果的に揶揄するかのような鋭さを秘めている。かつて私も児童館行事を舞台に、子どもとおとなの主体的参画過程について試行錯誤し、それを図表にまとめたりもしたが、本書はその「グループワーク的均衡」をダイナミックに「総括」してくれているものとして納得できるものである。また監修者木下勇氏の勇気ある「自省」も自らの問題として共感できる提起である。

 私がいま市民の手によるNPO活動に活路を見出しているが、その活動の示唆にも、本書ロジャー・ハートの「まなざし」から学ぶことが多いと唸りながらページをめくっているところだ。

                         NPOフォーラムしながわ

                                竹内 敏


「参画のはしご」と「融合の発想」

 

 秋津コミュニティは、何をするにも「融合の発想」により習志野市立秋津小学校を地域の基地にしながら年間365日を通してさまざまなことを行い、まちづくりにまで発展してきています。

 「融合の発想」とは、「関わり合う者や機関同士が双方にメリットを生むように始めから意図してある行為を行おうとする発想法」です。学校教育課程と地域社会の大人双方にメリットのある参画を仕組めば「学社融合」になります。子どもと大人双方にメリットがあるように仕組めば「子大融合」になります。いま秋津では、学校を基地とした地域社会ぐるみの「融合プログラム」が30ほども開発されています。そんな経験から、「子育て支援」ではなく「子育ち支援」として考えるようになりました。子どもたちも自ら伸びようとし、まちづくりに参画する主体者としての仲間だと実感できるようになってきたからです。

 本書でハート氏は、「私たちの究極の目的は、学校および学校のカリキュラムをコミュニティづくりと結びつけることが当り前の教育概念になるようにすることである」(59頁)と述べています。「秋津では当り前」になれたのは、ハート氏の「参画のはしご」から多くの示唆をうけたからです。「学校を地域に開放すること」は、学校教育が間違いなく充実しまちづくりにまで発展することは、もはや疑いはありません。本書を特に教育関係者におすすめする所以です。

                     習志野市・秋津コミュニティ会長

                                岸 裕司


新しい〈子ども−おとな〉関係へのヒント

                             

 〈おとな〉が〈子ども〉を一方的に指導するという教育的構図が崩れだしている。しかしながら「子どもの参画」をと言いながらも実際は「参画と呼べない参画」がなんとまかり通っていることか。〈子ども〉を「操ろう」とする〈おとな〉の欺瞞性はすでに彼らには感知されているのに。そうした〈おとな〉への「あきらめ」が〈子ども〉の不登校感情を誘い出すことになってはいないか。教育される存在としての〈子ども〉と自律的存在としての〈子ども〉の相互関係をどう捉えたらいいのか、私たち〈おとな〉は迷っている。 このロジャー・ハートの著作には私たちの迷いに応えるヒントが詰まっている。〈子ども〉みずからが声を発信し、それに〈おとな〉が応答し、共同して社会をデザインしていくアクション・リサーチの豊かな事例。子どもたちには地球市民としての能力が豊かに備わっていることやその可能性には驚かされる。そして世界各地からのさまざまな事例を通して〈子ども〉の自律性は〈おとな〉のサポート(教育)無くして育っていかないことと、同時にその〈おとな〉からのサポートは〈子ども〉の自律性によって裏付けられなかったらサポートと言う名の「操り」になってしまうことを学ぶことができる。

 この本は新しい〈子ども−おとな〉関係を創造したいと願っている私たちにとって、警告とヒントに満ちた格好の手引き書になっている。

                     NPO文化学習協同ネットワーク

                               佐藤 洋作


子どもへの信頼と未来への希望の書

 

 ゼミナールで学生たちと半年間、本書を使って討議をしながら学んだことは、まず子どもたちへのしっかりとした信頼を土台に子どもへの援助があるべきであるということであった。この当たり前のおとなの眼差しが問い直されているということであった。その意味で本書は信頼の子ども論である。つぎに本書はこの時代を人間的に再生させていくための手だての基本的なプロセスとヒントがちりばめられている。それをわが国でどのように実践化していくのかは容易ではないが、不可能ではないことを実感させる書である。その意味で本書は希望の書であるといえよう。そして本書を使って論議するということは、学生にとってはやや難解ではあるが、自由な発想で多様な読み込みができるということであり、その意味で本書は討論のコミュニティ形成の書であると思う。学生たちにとってもジワジワと本書の重みが持ち運ぶことで感じる段階から、その思想性において理解されはじめているように思う。

 私自身はこれまで引用文献として目にすることはあったが、全体を読み通す機会はなかった。いつかその機会をと思っていたが、ようやく読むことができたという喜びを感じている。大著である本書を訳された訳者と出版社にも感謝である。本書を読むことを通して、援助論としての発展、おとなと子どもの関係形成論、本書ではあまり扱われていなかった性に関わる参画能力についても考えてみたいと思った。その意味では、本書はさまざまなテーマへの放射力のある文献であるということができるのではなかろうか。今後とも本書に立ち返ることも少なくないであろう。

 現在、子どもの権利の本質に関して、自己決定・社会的参加権に力点を置くのか、人間関係論的権利としての意見表明権に力点を置くのかをめぐって論議があるが、そうした観点からもう一度本書を読み直してみることも必要であるといえよう。子どもの全面的かつ調和のとれた発達をどのように援助・保障していくのかも現代のおとなたちに課せられた「最善の努力」である。本書を読み通すことができるかどうかが「最善の努力」を示す試金石であるといえよう。

 心から本書を推薦し、多くの人たちに読まれることを願っている。

 

                浅井 春夫(立教大学コミュニティ福祉学部)

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